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あしあと

    サッカー指導者として行き着いた、みんなの居場所“サンクチュアリー(聖域)”の守り人の想い Sanctuary羽村FC

    • 初版公開日:[2024年02月27日]
    • ID:18414

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    こちらは令和6年2月に掲載した記事です。団体について詳しく知りたい方は、最新の情報をご確認ください。

    金子 知子(市民記者:ともちゃん)

    Sanctuary羽村FC


    ある日のS&Dスポーツパーク富士見(富士見公園)のグラウンド。


    おおー!いいねー!よく追いついた!

    今の良かったよ!


    そんなコーチの明るい声と、子どもたちの笑い声が絶えないサッカースクールがあります。


    サンクチュアリー羽村FC。

    小学校6年生までを対象とした週2回のスクールと、中学生のジュニアユースチームを併せ持つサッカークラブです。


    みんな笑顔!小学生チーム


    代表の石井さんは、この日も小学生たちと一緒にプレーしながら笑顔で声を掛けます。

    コーチありがとうございましたー!

    コーチ、月謝持ってきた!

    おーい、これ、そろばんの月謝じゃん!笑

    みんな気を付けて帰れよ!

     

    最後まで笑いの絶えない小学生のスクールが終了すると、中学生の練習が始まります。

     

    聞けば、練習の30分前集合が暗黙のルールなのだとか。

    中学生たちに、そっとコーチの印象を聞いてみました。

     

    “挨拶とか時間に厳しい”

    “怒ったらマジでヤバイ”

    “サッカーだけじゃなくて何でもできる。勝てる気がしない”

     

    「勉強でもサッカーでも、コーチはできて当たり前。言うべきことを言うために、今でも努力してます。負けたくないんで(笑)」

     

    そう話す石井さんは、ここ羽村の地で、チームを始めて13年目。

    地元・目黒で最初に小学生を教えてからおよそ35年という長い間、小学生、中学生、初代大田区女子サッカーチームのコーチなどを歴任し、指導者として歩んできました。


    笑顔が印象的な石井さん

    練習を見守る石井さん


    勝ち負けにこだわらず、毎回、全員が試合に出られるチーム。   

    それが、サンクチュアリーの特徴の一つです。

     

    専門の教育機関でサッカーの指導者としての知識や技術を専門的に学び、のちの女子日本代表選手やJリーグのプロサッカー選手も育成した経験を持つ石井さん。

     

    勝ち負けにこだわらないクラブチームと聞くと、例えば強豪校への進学など、上を目指すいわゆる「クラブチーム」の在り方から逆行しているようにも感じます。

    チームの勝ち負けよりも、一人一人を大切にしたいという石井さんの想いの原点には、忘れられない出来事がありました。

     

    一学年だけ、卒業まで、という契約で引き受けたあるクラブチームのジュニアユースのコーチ。

    結果を出すよう求められ、3年生になる最後の一年は、リーグ戦で負けたら年度末を待たずにその時点で終了という契約でした。

     

    中学校3年生、最後のリーグ戦。

    勝ち上がれば勝ち上がるほど、秋を過ぎても大会が続き、その間、チームが勝つためにまったく試合に出られない子たちの存在がありました。

     

    求められた結果を出してチームは東京都でベスト8にまで勝ち上がりましたが、リーグ戦の終了とともに、石井さんは契約通りチームを去ることに。

     

    一年生の時から、全身全霊、すべてを注ぎ込んで指導してきた大切な子どもたち。

    契約にしばられ、求められるままに結果を出すことを重視した結果、試合に出ることを目標に一生懸命頑張っていた子たちを全く試合に出してあげられなかったこと。

    たかがベスト8。チームが勝って、何が残ったのだろう。

    サッカーの指導者としての在り方に悩み、もうやめようと考えていた石井さんに、

     

    「コーチ、やめないよね」

     

    そう声を掛けたのは、長いリーグ戦の間じゅう、ずっとベンチから試合を見ていた子たちでした。

     

    チームが勝つために、自分が出られなくても文句も言わず、それでも、自分も試合に出たい、そのために毎日の練習も休まずに、懸命に頑張っていた子たち。

     

    「この子たちのためのチームがあってもいいんじゃないかって。勝ち負けにこだわらず、全員を試合に出せるチーム。サッカーを通して、一生懸命努力することを学んでほしいし、一生懸命頑張れば、きっと誰かが見てくれている。そんなことを教えるサッカーチームがあってもいんじゃないかって思ったんです。でも、勝ちにこだわらないクラブチームって、ありえないですよね。だから、自分で作るしかないなって。」


    毎週実施している勉強会の様子。勉強以外にマジックやルービックキューブも。3年間でプロ並みの腕前になるほどの選手もいるとか

     

     「ジュニアユースでは、サッカー以外のところもかなり厳しくやります。例えば、勉強会も毎週やりますし、そこでは学校の宿題以外の課題もたくさん出しますが、それは、人生に幅を持たせたいというのと、できるまで努力するという姿勢を身に付けてほしいという思いから。できる・できないも、どのくらいでできるようになるかのタイミングにも個人差がある。それでも、中学校3年間卒業するまでの間に身に付けばいい。」  


    夏合宿。火起こし、設営、炊事など生活のすべてを自分たちの手で


    「でも、努力を続けるって大人でも難しいことですよね。だから、厳しいことも言いますが、何と思われようとそれを続けていくことかな。自分の子どもだと思って話しますし、そうやって本気でぶつかっていかなきゃ、本当に子どもたちを守るとは言えない。だけど、そうやって本気で話していれば、親以外にも本気で向き合ってくれる人がいるって伝わるのかな。卒団したら顔も見たくないって思いそうなものだけど、みんな帰ってくるんです。」


    「普段の練習もそうですが、お盆とか、お正月とか、貴重な休みを使って会いに来てくれる。教えてたチームの隣のチームの子とか(笑)、卒団生の保護者まで。みんな恩返しだって言ってくれるけど、逆なんです。自分の方が元気をもらってる。」


    小学生、中学生、OBみんなで一緒に練習することも


    一人一人を大切に育てたい。

    全員が試合に出られるチームでありたい。

    そして、卒団した後も、自信を持って人生を豊かに歩んでほしい。

    そんな想いで指導者として行き着いた場所、Sanctuary羽村FC。

     

    サッカーの強豪校に進学して、部活でサッカーを続けていたり、中学・高校から目標としていた職業に就いていたりと、サンクチュアリーで努力することの大切さを学び、胸を張って卒団したOBたち。

     

    そして、練習に顔を出す先輩たちと一緒にボールを追い掛けながら、その姿を目に焼き付け、自分の未来を見据えて目を輝かせる後輩たちの姿がありました。

     

    “常に、自分が教わりたい指導者でありたい”

    “いつでもみんなが帰ってこられる場所でありたい”

     

    石井さんが守り続けたこの聖域(サンクチュアリー)に「お帰り!」の声が響き、今日も懐かしい笑顔が集まります。


    Sanctuary 羽村 FCのエンブレム

    石井さんの羽村おすすめスポット:根がらみ前水田のチューリップ


    ただキレイなだけではなく、保育園や幼稚園、施設の方たちみんなで球根を植え、シルバーの方々の運営でできあがっている景色がサイコーです!


    インフォメーション

    ともちゃんのイメージ画像

    金子 知子(ともちゃん) 楽器技術者。同じく楽器技術者の旦那さまと共に、子どもたちとお酒と平和をこよなく愛する3児の母。2013年に杉並区から羽村市に移住。

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