聴覚障害は、外見上は障害があるかどうかがわからないことが特徴です。このため、聴覚障害のある方が後ろから来る車の音に気づかなくて怖い思いをしたり、電車の中のアナウンスが聞こえず困ったりしていても、周りの人にはわかりません。
聴覚障害のある方は、聞こえにくい(または聞こえない)ために音声での会話が困難です。会話だけではなく、周りの状況を知るための音の情報が入りにくいことも、この障害の特徴です。
聴覚障害とひとことで言っても、聞こえ方は一つではありません。補聴器がなくてもなんとか会話が聞き取れる人、補聴器をつければ会話が聞き取れる人、補聴器をつけると大きな音はわかるが、会話は聞き取れない人など、人によってさまざまです。片方の耳はよく聞こえて、もう片方の耳が聞こえない人もいます。
聴覚障害のある方は、聞こえ方やこれまでの生活によって、それぞれにコミュニケーション方法を身につけてきています。コミュニケーションには、音声での会話、手話、筆談、読話(話し手の口の形や動きで話を読み取る)など、さまざまな方法があります。多くの人は、どれか一つの方法だけを使うのではなく、いくつかの方法を、相手や場面に応じて組み合わせて使っています。
聴覚障害のある方と出会ったら、まず、どのような方法(音声・手話・筆談)でコミュニケーションをとればよいか、本人に尋ねてください。きっと、あなたとその人に合う方法を、教えてくれるはずです。
周りの人に「私は聴覚障害があります」と伝えてあっても、話しかけられたときに気づかず返事をしないことなどから、周りの人に「社交性のない人だな」と誤解される場合があります。1対1の会話はできるのに、会議などで十分に聞き取れないと、「本当は聞こえるのにまじめに聞いていないな」と思われてしまう場合もあります。
聴覚障害は、聞こえ方が人によってさまざまなので、コミュニケーションに一つの完璧な方法があるわけではありません。どんな配慮をすればよいか、本人に教えてもらうのが一番です。
1対1では音声での会話ができる人でも、複数の人が一度に話すと、ことばの聞き取りが非常に難しくなります。手話通訳者や要約筆記者がいるときでも、複数の人が一度に話すと、通訳が非常に困難です。その結果、聴覚障害のある方には十分に情報が伝わらず、会話についていけなくなります。
会話がスムーズにいかなかった経験から、自分から人に案内を求めることをためらっている人がいるかもしれません。
「ゆっくり話してください」「筆談でお願いします」「手話通訳者と一緒に来ました」など、聴覚障害のある方が希望を申し出ることがあります。
戸惑っているときに口頭で説明を聞くだけでは、混乱してしまうことがあります。メモに書いて渡すと、より確実です。
隣の座席に聴覚障害のある方が座っていたとしても、その人に聴覚障害があるかどうかは見た目にはわからないものです。
電車やバスの中、駅のホームなどのアナウンスは、聴覚障害のある方には聞き取りにくいものです。このため、電車やバスの中で、周りの状況を把握できないことがあります。
聴覚障害のある方が音声で会話をしていると、周りの人は、「話ができるのだから、何でも聞こえているのだろう」と誤解しがちです。しかし、聴覚障害のある方にとって会話を完璧に聞き取ることは非常に難しいのです。1対1では聞こえていても何人かで話すと聞き取れなかったり、半分は聞き取れていても聞きもらしや聞き違いがあったりします。補聴器をつけていても、100%聞き取ることはできません。聞き取りやすくするためには、話し手がわかりやすい話し方をすることが大切です。
わかりやすい話し方とは?
(1)常に顔の見える位置で
口元の形や表情は、ことばを聞き取るための大切な情報です。隠されると会話がわかりづらくなります。
(2)注意をうながしてから話す
注意が向いていないときは、聞く準備ができていないので、ことばが届きません。
(3)ゆっくり話す
どんなに性能の良い補聴器をつけていても、早口は聞き取りにくいものです。
(4)ことばのまとまりで区切る
1音1音区切ると、かえって意味がわかりにくくなります。ことばのまとまりで区切ると、理解しやすくなります。
(5)大げさな話し方はダメ
極端にゆっくり、はっきり話をされると、「目立ってしまって嫌だな」「そんなに大げさに言われたくないな」など、不愉快な思いをする人もいます。
(6)雑音を少なく
雑音の中でことばを聞き取ることはとても困難です。
(7)補聴器を使っている方には話し方の工夫を
補聴器は基本的に音を大きくする器械です。音を感じる器官(内耳)に障害がある方も多く、補聴器で音を大きくしても会話がきちんと聞き取れるとは限りません。その理由は障害の程度によって異なりますが、聴覚障害のある方の多くが音だけでなく、言葉が聞こえづらくなるからです。補聴器の使用にあたっては、相手が聞き取りやすい話し方の工夫が必要です。
(1)正面か、聞こえる側から話しかけてください。
聞こえない側から話しかけられると、気づかなかったり、聞こえにくかったりします。
(2)十分に注意をうながしてから、話しかけてください。
片耳が聞こえにくい場合、急に話しかけられても気づかない傾向があります。
(3)音の方向がわかりにくいことを理解してください。
名前を呼ばれた方向や物音の方向がわかりにくいため、周りの状況を把握することが難しくなります。
(2)筆談や身振りなど、他の方法も使ってみましょう。
聞こえにくいことばは、何回繰り返しても聞こえにくいものです。他の方法もあわせて使うと伝わりやすくなります。
(3)何の話をしているかを伝えてください。
何の話をしているかがわかれば、内容を推測しやすくなります。
(4)わからないときは、いつでも聞き直せる雰囲気を作りましょう。
聞き返して嫌な顔をされた経験などから、わからなくても適当に相づちを打っている人もいます。
(5)大事な内容を伝えるときは、書いて渡したり、復唱してもらったりしてください。
補聴器をつけていても、聞き違いはよくあることです。きちんと伝わっているかどうか、確認が必要です。
手話は、聴覚障害のある方の大切な言語です。手話を学んでコミュニケーションの方法を広げることも大切ですが、手話を知らなくても、聴覚障害のある方とコミュニケーションをとることはできます。なぜなら、聴覚障害のある方の多くは、相手に応じてコミュニケーション手段を使い分けているからです。
聴覚障害のある方でも手話ができない方が多くいるので、身振りや筆談など、手話以外の方法をあわせて使ってください。
(1)相手の口形や表情に注目しましょう。
手話がわからなくても、口形や表情を手がかりに内容を読み取ることはできます。
(2)身振りなど、他の方法も使いましょう。
手話ができなくても、簡単な内容を身振りでやりとりすることができます。
(3)わからないときは聞き返してください。
わかったふりをして話を進めると、誤解が生じます。
(4)わかろうという姿勢で接してください。
「わからない」と思い込んでしまうと、相手の伝えようとしていることを汲み取ることが難しくなります。よく見たら、相手は口形ではっきり伝えてくれているかもしれません。
(2)伝わっているかどうか、確認してください。
どんなに熟達した手話通訳者・要約筆記者がいても、複数の人が同時に話す場合や、本人以外の人同士が話す場合などは、状況を確実に伝えることが困難です。
「通訳者がいるから大丈夫」と思って、聞こえる人のペースで話していると、聴覚障害のある方には十分に伝わらないこともあります。
・聴覚障害のある方に書いて伝えるときのポイント
(1)短い文で書いてください。
長い文は前後の関係などが複雑になり、理解しにくくなります。短く簡潔に書くことが大切です。
(2)日常使う漢字を使ってください。
字は意味の理解に役立ちます。かな文字が多すぎると、ことばのまとまりがはっきりせず、意味がわかりにくくなります。
(3)記号や図を用いて表現を明確にしましょう。
視覚的に図式化された表現の方が、必要な情報が伝わりやすくなります。
・聴覚障害のある方が書いたものを読むときのポイント
(1)表現に不十分な点があっても、書かれた内容を汲み取るようにこころがけてください。
幼少時から重度の聴覚障害がある人の中には、ことばの習得に影響があり、読み書きが苦手な人もいます。しかし、用件を伝えるために筆談しています。ことばづかいの誤りにとらわれないでください。
(2)書かれた意味が理解できない場合は、本人に直接質問してください。
意味を確認しないままでいると、誤解が生まれます。
今は聞こえている方でも、だれもが加齢や突然の病気などで聞こえにくくなる可能性をもっています。
(1)「しっかり聞きなさい」と言わないでください。
聴覚障害の方は、一生懸命聞くことに集中したり、周りの状況に目を凝らしたりしています。
(2)聞き返されたときは、快くもう一度言ってください。
聞き返したときに相手が不快な顔をすると、話したい気持ちがなくなっていきます。その結果、会話をするのが嫌になってしまうこともあります。
(3)複数の人が一度に話すのではなく、一人ずつ話すようにしましょう。
家族の団らんなどのときは、つい聞こえにくい方がいることを忘れて早口になったり、一度に複数の人が話したりしてしまいます。しかし、聞こえにくい方にとっては、わからないまま取り残されることはストレスになります。
羽村市福祉健康部障害福祉課
電話: 042-555-1111 (障害福祉係)内線172 (障害者支援係)内線185
ファクス: 042-555-7323
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