狂犬病ウイルスが体内に入ると、エンドソームを経由して神経細胞の細胞質に入り込みその中で増殖し、細胞質にネグリ小体と呼ばれる特有の封入体が形成され、末梢神経を介して脳神経に達した後に狂犬病を発症します。脳神経から離れた部位に感染するほど、潜伏期間が長くなりますが、通常潜伏期間は犬で1週間から1年4カ月程、人で10日から数年(平均1~3カ月程)です。
狂犬病を発症した場合、実験的処置法であるミルウォーキー・プロトコル以外の回復例はなく、ほぼ100%死亡します。(ミルウォーキー・プロトコルによる回復例も世界数例であり、ほとんどの患者は亡くなっています)
このため、発症前の狂犬病ワクチン投与が最も効果的な治療法です。
日本では昭和32年を最後に国内感染による狂犬病の発生はありませんが、世界的には現在も年間5万人以上が狂犬病により死亡しており、このうちアジア地域は年間3万人以上が亡くなっている、世界で最も狂犬病による死亡が多い地域です。
物流の発達している現在では、日本に狂犬病が持ち込まれ、国内発生してもおかしくない状況です。
潜伏期間は10日から数年、通常は1か月~3か月程度です。
発症すると、強い不安感、一時的な錯乱、水を見ると首(頚部)の筋肉がけいれんする恐水症、風でも同様にけいれんする恐風症、高熱、麻痺、運動失調、全身けいれんなどの神経症状が起こります。
その後、呼吸障害等の症状を示し、死亡します。
経過 | |
11月9日 | 風邪様症状を呈しA病院を受診。 |
11月12日 | 水が飲みにくく風が不快との症状によりB病院を受診。脱水症状が認められたことから、点滴を受け帰宅。 |
11月13日 | 幻覚症状を呈し、再度B病院を受診。恐水及び恐風症状が確認され入院。 |
11月14日 | 人工心肺で処置 |
11月17日 | 死亡 |
海外に渡航するときは、不用意に犬や野生動物などに手を出したり近づいたりすると、狂犬病に感染する恐れがありますので注意してください。
狂犬病の発生地域において動物などに咬まれたり引っかかれたりしたときは、すぐに傷口をきれいな水と石けんで洗い、現地医療機関を受診してください。
狂犬病予防接種ワクチンの接種は、咬傷する前に行っても効果があります。
詳しくは、厚生労働省ホームページをご覧ください。(厚生労働省のホームページに移ります)